ブロッケンシンドローム

おれは、たぶん三月精の3巻だったのかな、何か本を買おうと思って行きつけの本屋に出向いたのだけど、人だかりを抜けて防犯用のゲートを抜けると、店の中はうって変わって殺風景な状況。人も少なければ品物も少ない。棚もまばらで、棚の中身もまばら。まるで棚卸し前みたいな。


比較的人の多い一角、でっかいリュックサックを背負った人が数名立ち読みしてる横を通ると、棚に並んでいる本は売り物と思えないほどぼろぼろで、古本コーナーというよりうらぶれた定食屋の本棚のようだった。その横にはガラスケースが並んでいて、ケースの中にはおそらく骨董的に価値が高い本が陳列されている。


その反対側には、柵で区切られたよくわからないコーナーが設けられていて、ニコニコ広場、とかそんな看板。その隣にはカードゲームの対戦コーナー。いずれも数名の着ぶくれしたひとが座り込んで、各々何かをやってる。動画サイトでも見てるんだろうかと思う。皆やけに厚着だけど、まあこんな寒々しい雰囲気の場所じゃ、厚着でもしないと新型インフルエンザにもかかってしまうよな。


ネットで事足りるご時世に、それでも物理的に同じ場所にありたいと願うんだろうか、と思う。こんなコーナーを作るこの本屋の発想は流石だけど、それほど長くは続かないだろうことはこの状況を見れば一目瞭然だった。品揃えの悪さなど当然のことだよな。わざわざ本屋で本を買う理由もなく、本が紙でできた物質である必要すらないこの時代に。


裏口から外に出ると、道ばたには雪が積もっていた。高層ビルの隙間には、ビルの影より少しだけ明るい曇った夜空。あまり治安がよくなさそうなので、おれは急いで表通りに向かう。



最近どうも睡眠時間が増えていて、せめて夢から得るものでもないかなと思うのだけど、発狂してる感じのリアリティくらいしか伝わるものがないな。はあ。しかし、なんか夢の中でもいろいろ考えることが多くなった気はする。昔はもっと無自覚に状況に流されてなかったかな−。思い出せはしないけど。