津軽半島から一気に下北半島へ移動。日本三大霊場の一、恐山へ。ベタではあるけどやっぱりここはすごい。他の二カ所と比べるとかなり僻地だし、その辺も良い方に働いてるのかな。普通に青森市から3時間かかる。火山岩特有のごつい岩山ばかりの荒れ地と湖。かなり隔世の風景が展開されていて、さすがこんな場所が有名になるわけだと思った。ガスの吹き出す場所に石を積んであったのかな。仏像、石碑、風車といったオブジェも風景にとけ込む。曹洞宗の寺院ということでもちろん仏教色に染まってはいるんだけど、宗教の違いはあってもやっぱり日本人の死国観は山にあるよなあと実感できる。人は死んだらお山にいくのです。黄泉国とかも平地の地下ではなくて、山に向かって横に洞窟が繋がってるんじゃないのとか、木は山から生えてくるとか、要するに土のかたまりとしての山とかそんなイメージ。ちなみに恐山に行くなら早朝がおすすめ。入場料金は必要だけど朝6時から開園してる。


薬研温泉で一休みして大間へ。こちらは岬の先端は完全に観光地化していて到達可能。海峡の向こうに函館を確認する。大間は丁度夏祭りをやっていてちょっと見学。特徴的なところで、御輿の通り道に塩で道(御輿を通す道路の真ん中に点々と塩を盛っていく感じ)を描き、各家庭が家の玄関からそのラインに向かって同じく道を作る、というようなことをやってた。車で通りがかったのだけど、特に交通規制もされてなくて、この塩踏んで良いの…?な気持ちだった。
しかし大間はマグロ一本でネタを引っ張りすぎだな。マグロ一本釣り像とか冗談すぎる。まあとはいえここで食わずに何処で食うということでマグロ丼をさくっと食して去ることに。しかし、ここで食べられるマグロって陸揚げされてすぐのやつなのか、築地からUターンしてきたものなのか、おれの舌では判別できないな。でもやっぱ普通に考えると、特にちゃんとした店で出されるようなものは、流通の問題があるから、いちど築地を経由してるんだろうなあと素人的に思う。裏は取ってないので港直送だったらすみません。しかしいつも思うこと、旅の途中で食事に時間を使うのってもったいないよなと思う。海鮮丼あたりいならさくっと出てくるので良いのだけど。実際現地でしか食べられないものなんてほとんどない。名所は持ち運べないが、名物は持ち運べるのだぜ。


といいつつ、縄文定食は食べようと思っていた三内丸山遺跡。到着時はすでにレストランは閉まっていた。しかしすごい豪華な施設だなここ。これを無料開放しているとか青森かっこよすぎる。縄文時代の住居など基本的に現在の家の構造とほとんど変わってないのが何とも。特に茅葺きとか基本的に5000年技術革新なし的な。そういやガイドの人は弥生時代は紀元前1000年からと言ってた。最近はだいぶぶれてるみたいだけど、おれは紀元前300年て習った記憶はある。まあ、稲作の有無だけで区切る時代なんて意味あるのかないのか微妙なところだよな。狩猟採取といっても、畜産とか難しくない栽培は当然やってたろうし。
この遺跡で一番特徴的な6柱の高層建築物だけど、実際見つかってるのは柱の根本部分だけなのね。なんかいろいろと創作されている気はする。専門的には宗教的なモニュメントか、実用的な建造物(物見櫓とか灯台とか)かという見解らしいけど、個人的にはなんか的が外れている気はする。たとえば東京タワーとか自由の女神とかが宗教的あるいは実用的建造物かみたいなことを論じている感じ。東京タワーはいちおう電波塔ではあるけど、実用的なばかりではないし、宗教的な建造物でもないよな。だいたい集落にはその集落の目印となるものを建てたくなるんじゃないのかな。民族の象徴みたいなたいそうなものではなくて、集落の象徴として。
しかし、縄文時代、といっても大雑把すぎる感じはあるけど、の宗教観ってよくわからなかったな。土偶とか装飾物とかの根元にあるのはまだ宗教と呼べる水準の意識ではない気はする。宗教に体力を削くだけの余裕がなかったのか、ごく実用本位な姿しかみえてこない感じ。理由はともあれ、宗教色の薄い時代だったのかなーという印象。


ここまで霧はひどかったものの雨はほとんど降らなかったのだけど、ここに来て雨に。ニュースを見ると東北地方は今年は梅雨明け宣言しませんっ!とか遊びでやってんじゃねえぞ気象庁ッなどと思いつつ。で、よくよくみたらこの雨は台風の影響であったらしい。八甲田に向かい酸ヶ湯温泉にて一回休み、その後奥入瀬渓流十和田湖一週ぶらりサイクリングを予定していたのだけど、奥入瀬の濁流をみて中止し帰路に着くことに。R103の途中で大湯の環状列石を見る予定だったけどこれも中止。東北道を南下。


水沢付近まで南下したところで、台風が逸れ気味であることを知り、急遽遠野方面に寄り道することに決定。平泉前沢で降りて下道を2時間。(いやまあ北上で降りる方が当然近いのだけど、すでに通り過ぎていたのと夜だったのでまあ良いかと) 釜石道を使えば下道は1時間弱かな。道路の改良工事は結構進んではいるみたいだったけどやはり遠い。夜明けとともに自転車で乗り出す。


・続石…いきなりプチ登山。いつもながら弁慶さんはよく仕事をするなあ。もう少し無茶な所行になるとダイダラボウに発注することになるのが世の常。
・曲り家千葉家… 早朝につき当然閉園中。
・五百羅漢… 超時空シンデレラ羅漢ちゃんです!キラッ☆ミ。苔むしていて大半はよくわからなかった。ほんとに500体あるのか調べたい。
・程洞コンセイサマ… またもやプチ登山。山崎さんのと比べるとだいぶ小ぶりであった。
愛宕神社… 火伏の御利益は当然として、賽の神としての意味もあったらしい。適当に合体した感じ?
・卯子酉様… 赤いな、、(赤さはどうでもいい)。馬好きの遠野で午を欠いたネーミングの意味は…と思って調べてもよくわからず。
・馬っこつなぎ… 名所?
早池峰古参道跡… 崩れかけの鳥居と石碑。鳥居の笠木は落ちたのか元から無かったのか。みょうに幅広のバランス(標準的な鳥居っぽくない)なのではじめから無かったほうが自然な気はした。こういう風景を待っていたよおれは。真後ろが畑になっていて鳥よけのブルーネットが視界に入るのがやや無念であった。
・常堅寺… カッパ狛犬に大量のキュウリが備えられていた。円柱からざっくり彫りだした感じのカッパ像がプリティーすぎる。結構広く使われているデザインみたいであちこちで見かけた。あとで寄ったおみやげやで木彫りの像を買おうかと思ったけど高すぎて断念。
・カッパ淵… 常堅寺のすぐ裏手にあり。入り口の橋のたもとに前述のデザインの木彫りカッパの像が建っていて、裏を見るとなにやら後頭部からレンズが見えている。こんな場所に監視カメラが…ではなく、遠野テレビのライブカメラとのこと。遠野テレビのカッパ生け捕り懸賞金企画は冗談すぎる。
・伝承園… 遠野観光の数少ない商売っけのあるスポット。千葉さんの家はみれなかったけど、こちらの菊池さん家で十分かな。道具類なんかも充実。ふつうに養蚕していて、養蚕関連の器具類や説明も充実していた。楽しすぎてここでかなり時間を使った。オシラ堂。一千体のオシラ様が天井ちかくまで壁にびっしり。この空間はやばい。オシラ堂のオシラ様はわりとざくざくっと掘り出した感じの無骨な表情のものが多かったのだけど、板屋のほうに数体飾ってあったオシラ様は表情が丁寧に彫り込んであってまた別の生々しい存在感があった。こっちが千体ならんでいたら相当やばかったと思う。ちなみにオシラ堂には無地の布が置いてあって、これに自分で願い事を書いてオシラ様の首にかけて良いとのことだったけどやめておいた。恐山とかもなんだけど、あんまりそういう場所にものを置いてきたり、逆にものをもらってきたりっていうのは割と抵抗があるんだよな。恐山でおみやげ買ってくるとか無理だわー。まあ損している気もするんだけどね。
・大槌街道跡… 道の分岐に石碑が並ぶ。なごむぜ…
デンデラ野… ただの草むらにしてすごくせまい。申し訳程度にぽつんと一件の小屋があって、看板には「あがりの家」との表記。ひとがいたらどうしようと思いながら中を覗くときの妙な感覚。
・ダンノハナ… ふつうのお墓。崖の中腹にあって山口の集落を一望できる。デンデラ野もそうだけど、このストレートな素朴さが逆にリアリティを醸す感じ。
・山口の水車… ふつうの水車。水田とあぜ道と水の流れと水車小屋。まあこの手の風景は遠野でなくてもわりと見れる。
・山崎のコンセイサマ… すごく…おおきいです。無限増殖する赤い小枕。先にも書いたけど、神社のすみにぽつんと設置されている雲梯が怖すぎた。結構坂を上ってこないとたどり着けない場所なのよ。



てな感じで、たらたらと6時間ほど徘徊したところで時間切れにつき終了。早池峰神社に行きたかったけど車でもちょっと遠いので断念。全体的にはあんまり商売っけがないなあという印象ではあった。観光客受けするような小細工が全くといっていいほどないのね。個人的にはそれが好感だったのだけど。
遠野って観光ガイドでは必ず1コーナー取るくらいにはメジャーだと思うんだけど、当人たちはあまり気合いを入れて観光客を呼び込もうっていう感じでもないのかな。近場にメジャーで見栄えのするスポットがあるでもないし、なんか一般的な観光目的できた人はわりと拍子抜けするかもしれないなと思う。
まあ、民話の世界であるし、扱いづらいってのはあるんだろうな。個々の物件は、元ネタが割とはっきりしているせいもあってふむふむとみれたのだけど、知識なしでみた場合、たぶん日本全国何処にでもあるものなんだよなきっと。たまたま遠野は、柳田國男のおかげで良好な姿で保存されているにすぎないんだろう。たとえば白川郷みたいに町全体で景観を整えたりすれば化ける気はするんだけど。
まあしかし、ふつうの田舎町の風景のあちこちに無造作にたたずむ石碑群とか朽ちかけた鳥居とか、そういうオブジェがとても多くて、これだけでも好きな人には楽しくてしょうがない町ではあった。


あと遠野観光するなら自転車が超おすすめ。名所があちこちに点在しているし、名所以外の道ばたの風景に目を向けて旨みが出てくる町であると思う。実際家族連れとか自転車で観光しているひとがたくさんいた。貸し自転車がどこかにあるのかな。猿ヶ石川に沿って伝承園から岩手二日町の先まで自転車道が整備されていてとても走りやすかった。起伏もほとんど無いし、車道と交差するポイントもほとんど無いという気配りの効いたコースで好感がもてる。



そんな感じで、3泊4日の旅であった。
次は九州方面へ弥生-邪馬台ツアーかなー。