「犬はどこだ」米澤穂信/東京創元社

おれが推理小説を読む場合、得点配分が一番大きいのが結果の確率的な妥当性なんだよな(たぶん普通より圧倒的に)。登場人物の判断や、ある程度振れ幅の予想される状況に対する結果がおれ的3σの内側にあるかどうかというところ。例えば、素人が撃ったボウガンの矢一本で相手が即死する可能性ってどんだけよとか思う。まあ話の流れで確率薄そうな結果になったとして、それ以外のあり得そうな結果にもしなっていた場合の補正策も用意されてるんならいいんだけど。そこはたまたまの偶然ですがもし違っていたらこの事件は全く成立しませんとか、そんな感じできちんとフォローされてないと何か萎えてしまってトリックどころではなくなるんだよね。あと、同様に低確率イベントが読者が推理する上でのクリティカルなノイズとして働くのもかなりやる気がなくなる。
つまりこの作品はそのへん全般に非常に腑に落ちた。まあいうなら最後に収束する2つの案件が、それぞれぜんぜん偶発的に始まってるのはどうかとは思ったけど。しかしこの人の作品の読後感は気持ち良い悪いがものすごく二分するよな。

これで氏の作品は概ね読み切ったかな。過去の記憶など引っ張り出してみて、氏の小説の中ではミステリ基準ではたぶん2番目に良かった。一番楽しんだのは「夏季限定」だったと思うんだけどなにせだいぶ前のことだし、もういっかい読むか。
ラノベ的には「遠回りする雛」「さよなら妖精」あたりをまず薦めたい。そりゃシリーズものは基本あたまから読んで欲しいけど単品ならば。ただし氷菓と愚者は昔過ぎて忘れたなあ。あのときはまだ挿絵がついてたよ。